リテラル
基本的なリテラル
整数リテラル(Int Literal)
0, -0, 1, -1, 2, -2, 3, -3, ...
整数(Int)リテラルはInt型のオブジェクトです。
Note:
Int
型の部分型としてNat
型が存在します。 0以上の数値はNat
型とも解釈できます。
有理数リテラル(Ratio Literal)
0.00, -0.0, 0.1, 400.104, ...
有理数を表すリテラルです。専ら小数として表現されますが、内部的には分数として扱われます。
Ratio
リテラルで整数部分または小数部分が0
のときは、その0
を省略できます。
assert 1.0 == 1.
assert 0.5 == .5
Note: この
assert
という関数は、1.0
と1.
が等しいことを示すために使用しました。 以降のドキュメントでは、結果が等しいことを示すためにassert
を使用する場合があります。
文字列リテラル(Str Literal)
文字列を表すリテラルです。"
でクオーテーション(囲み)します。Unicodeで表現可能な文字列は、すべて使用できます。
Pythonとは違い、'
ではクオーテーションできません。文字列の中で"
を使いたいときは\"
としてください。
"", "a", "abc", "111", "1# 3f2-3*8$", "こんにちは", "السَّلَامُ عَلَيْكُمْ", ...
\{...}
によって文字列の中に式を埋めこめます。これを文字列補間(string interpolation)といいます。
\{...}
自体を出力したい場合は\\{...}
とします。
assert "1 + 1 is 2" == "\{1} + \{1} is \{1+1}"
ドキュメンテーションコメントも文字列リテラルとして扱われるので、文字列補間が使えます。 これはコンパイル時に展開されます。コンパイル時に確定できない式を埋め込むと警告されます。
PI = 3.14159265358979323
'''
S(r) = 4 × \{PI} × r^2
'''
sphere_surface r = 4 * PI * r ** 2
指数リテラル(Exponential Literal)
これは学術計算でよく使用される指数表記を表すリテラルです。Ratio
型のインスタンスになります。
非常に大きな/小さな数を表すときに使用します。Pythonと表記法は同じです。
1e-34, 0.4e-10, 2.455+e5, 245e5, 25E5, ...
assert 1e-10 == 0.0000000001
リテラルを組み合わせて生成するもの(複合リテラル)
これらのリテラルは、それぞれ単独で解説されているドキュメントがあるので、詳しくはそちらを参照してください。
配列リテラル(Array Literal)
[], [1], [1, 2, 3], ["1", "2",], ...
組リテラル(Tuple Literal)
(), (1, 2, 3), (1, "hello", True), ...
辞書リテラル(Dict Literal)
{:}, {"one": 1}, {"one": 1, "two": 2}, {"1": 1, "2": 2}, {1: "1", 2: True, "three": [1]}, ...
レコードリテラル(Record Literal)
{=}, {one = 1}, {one = 1; two = 2}, {.name = "John"; .age = 12}, {.name = Str; .age = Nat}, ...
集合リテラル(Set Literal)
{}, {1}, {1, 2, 3}, {"1", "2", "1"}, ...
Array
リテラルとの違いとして、Set
では重複する要素が取り除かれます。
集合演算を行うときや、重複を許さないデータを扱うときに便利です。
assert {1, 2, 1} == {1, 2}
リテラルのように見えるがそうではないもの
真偽値オブジェクト(Boolean Object)
True, False
真偽値オブジェクトはBool型の単なるシングルトン(ダブルトン?)です。
Pythonからの伝統により、Bool
型はInt
型ないしNat
型のサブタイプとなります。
すなわち、True
は1
、False
は0
と解釈できます。
assert True * 2 == 2
Noneオブジェクト
None
NoneType
型のシングルトンです。
範囲オブジェクト(Range Object)
assert 0..10 in 5
assert 0..<10 notin 10
assert 0..9 == 0..<10
assert (0..5).to_set() == {1, 2, 3, 4, 5}
assert "a" in "a".."z"
Pythonのrange
と似ていますが、IntだけでなくStrオブジェクトなども範囲として扱うことができます。
浮動小数点数オブジェクト(Float Object)
assert 0.0f64 == 0
assert 0.0f32 == 0.0f64
Ratio
オブジェクトにFloat 64
(倍精度浮動小数点型)の単位オブジェクトであるf64
を乗算したものです。f32
をかけることでFloat 32
(単精度浮動小数点型)も指定できます。
これらは基本的にRatio
よりも高速に計算できますが、誤差が生じる可能性があります。
assert 0.1 + 0.2 == 0.3
assert 0.1f64 + 0.2f64 != 0.3f64 # Oops!
複素数オブジェクト(Complex Object)
1+2Im, 0.4-1.2Im, 0Im, Im
Complex
オブジェクトは、単に虚数単位オブジェクトであるIm
との演算の組み合わせで表します。
*-less multiplication
Ergでは、解釈に紛れがない限り乗算を表す*
を省略できます。
ただし、演算子の結合強度は*
よりも強く設定されています。
# `assert (1*m) / (1*s) == 1*(m/s)`と同じ
assert 1m / 1s == 1 (m/s)